気になる画鋲に、気になるチーコ



 我が家の壁には、ありとあらゆるところに、小さな黒い点が、無数存在する。よーく見ると、穴があいている。画鋲の痕跡だ。そうだ、ここには、確かに何かを留めていたであろう、跡。留められていたんだよね、チーコ!
 チーコは、しらーっと大きな目を見開いたまま、
「にゃんだったか、にゃん?」
と首をかしげる。




 画鋲。あのぴかぴかひかる、小さな点が、チーコには気になって仕様がなかった。
足を伸ばせば届く距離。前足で、なんじゃこりゃ、は! なんじゃこりゃ、は!
といじくりまわした。すると、ぽとん、ころころころ。
「ふん、なかなかおもしろい、にゃん!」
 チーコは、あっちで画鋲をはずし、こっちで画鋲をはずした。
「ふん、ますますおもしろい、にゃん!」
 その度に、カレンダーは、どさっと音をたて、家の者は、画鋲さがしに慌てふためいた。

 チーコが口に入れたら大変だ! 肉球にささったら大変だ!
 それでも画鋲はカレンダーを、何度か壁に貼り付け、チーコに何度も落とされた。
 そしていつしか壁にカレンダーが貼られることはなくなった。




「うーん、ここにたしか、なにかあったはず、にゃん!」
 チーコはたまに、壁を眺めながら、何かを思いおこそうとしているようだった。


(05.1.20)


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